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2003年に依田紀基が張栩に名人を明け渡して以来、三大タイトルは全て、四天王の間でたらい回しにされている。
四天王以外で七番勝負に登場したのは、第29期棋聖戦(2005年)の結城聡九段と第61期本因坊戦(2006年)の山田規三生九段。そして、2005年、第30期の名人戦で、張栩と第7局まで死闘を繰り広げた小林覚九段の3人だけ。
しかし、いずれもタイトル奪取はならなかった。 タイトル保持という意味では趙治勲十段がいる。昨年も山下の挑戦を退けて、四天王およびそれ以下の若手の時代に抵抗する孤塁を保っている。しかし、その趙も七番勝負から遠ざかってもう7年になる。
その趙が全盛を誇っていた時代に穴をあけた棋士が、小林覚九段だ。
最強を誇る趙から、颯爽と棋聖を奪取。そこから3年連続で趙と棋聖戦七番勝負を争った。 |
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あれから年月が過ぎ、時代は移り変わったが、現在の若手四天王の時代にもういちど風穴を開けるべく、小林はこの棋聖戦に帰ってきた。前回の七番勝負から、実に10年振りの登場となる。
迎え撃つ山下敬吾棋聖。ここ数年はすっかり、冬の主役の座を譲らない。
3年連続での王座戦・4年連続での天元戦五番勝負をこなし、王座を奪取した勢いで七番勝負に乗り込んでくる。昨年も王座・天元・棋聖・十段と四棋戦連続の挑戦手合に登場して、最近の碁界の一年はすっかり、「山下で始まり、山下で終わる」状態になっている。
しかし、山下に「第一人者」の評価はまだ下されない。山下が頂点の地位を揺るがないものにするために、どうしてもクリアしなければならない課題こそが、今まで一度も成功したことのない「タイトルの防衛」だ。
挑戦手合に登場した回数は四天王でも最多、山下は15回、張栩13回、羽根7回、高尾4回だ。
ところがタイトル獲得数となると、張の8回、羽根の5回に遅れを取っている山下は現在4回。山下の課題は挑戦手合であり、タイトル防衛なのだ。
もちろん本人も意識している、この棋聖戦を防衛して、「山下時代」の幕開けとしたいはずだ。
二人とも複合的な棋風なので、展開の予想は難しい。山下の豪腕を、小林が正面から迎え撃つか、それとも持ち前の厚みで封殺するか。そのあたりの駆け引きが見所だろう。二人の対戦成績は山下の7勝4敗。最近の大一番は、一昨年の名人戦挑戦者決定プレーオフと昨年の王座戦挑戦者決定戦。前者は小林が勝ち、後者は山下が勝って1勝1敗。二人の番碁は初めてだ。
小林が棋聖に返り咲くか? 山下が初のタイトル防衛を果たすか? いずれにせよ、時代の節目となる七番勝負になる。 |
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日程 |
勝者 |
敗者 |
結果 |
第1局 1月17・18日
北海道旭川市「旭川パレスホテル」 |
山下敬吾棋聖 |
小林覚九段 |
黒中押し勝ち |
第2局 1月31日・2月1日
和歌山県白浜町「むさし」 |
山下敬吾棋聖 |
小林覚九段 |
白中押し勝ち |
第3局 2月7・8日
福島県会津若松市「今昔亭」 |
山下敬吾棋聖 |
小林覚九段 |
黒中押し勝ち |
第4局 2月22・23日
富山県高岡市「磯はなび」 |
山下敬吾棋聖
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小林覚九段
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白中押し勝ち |
第5局 3月1・2日
愛知県田原市「伊良湖ガーデンホテル」 |
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第6局 3月14・15日
静岡県小山町「経団連ゲストハウス」 |
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第7局 3月21・22日
長崎県雲仙市「富貴屋」 |
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昭和53年9月6日生。北海道旭川市出身。菊池康郎氏に師事。
平成5年入段、15年九段。 昭和61年に8歳で小学生名人になり、緑星学園に入会。平成10年に第23期新人王戦で優勝し、以降4連覇。平成11年第14期NEC俊英トーナメント優勝。平成12年第30期新鋭トーナメント優勝。同年第25期碁聖戦で、小林光一碁聖に挑戦、3勝2敗で初のビッグタイトルを獲得した。平成13年には第27期名人リーグ入り。平成14年には本因坊リーグ、棋聖戦リーグにもそれぞれ入り、そのまま第27期棋聖戦で挑戦者となる。年が明けての初の七番勝負で王立誠棋聖を4勝1敗で破り、史上最年少で棋聖位を獲得した。同じく平成15年に第28期名人戦で挑戦者になったが、依田紀基名人に敗れた。また第29期天元戦で挑戦者になったがこちらも羽根天元に2勝3敗で破れた。平成16年の棋聖戦で羽根の挑戦を受け、3連敗の後に3連勝を返したが、第7局で敗れた。しかしその年末には30期天元戦で二年連続挑戦者になり羽根天元を3-0で破って天元位を獲得した。31期には河野臨に天元位を明け渡したが、32期にも挑戦者となり、4年連続で挑戦手合に登場した。王座戦でも第52から54期に3年連続で張栩王座に挑戦。3度目の挑戦でタイトルを奪取した。
棋道賞は平成9年勝率第一位賞、最多対局賞、新人賞、平成10年最多勝利賞、連勝記録賞、最多対局賞。平成11年勝率第一位賞。平成12年優秀棋士賞、最多勝利賞。最多対局賞。平成15年最優秀棋士賞。平成16年最優秀棋士賞、最多対局賞。平成12年第38回秀哉賞、第18回ジャーナリストクラブ賞受賞。平成15年旭川市民栄誉賞受賞。 |
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昭和34年4月5日生まれ。長野県。木谷實九段門下。
49年入段、62年九段。 58年名人戦リーグ入り。62年NEC俊英トーナメント優勝。平成2年IBM杯戦優勝、平成2年から平成4年にかけて3年連続の碁聖挑戦(いずれも小林光一碁聖に敗れた)などの活躍があるが、何と言ってもその名を超一流棋士に押し上げたのは、平成7年の棋聖戦で趙治勲棋聖(本因坊・王座)を4―2で破って棋聖位を奪取したことだった。同年NHK杯でも優勝し、さらに碁聖位も獲得して二冠に輝く。棋聖戦は翌平成8年に趙の挑戦を受け、惜しくも3勝4敗で敗れた。さらにその翌年の平成9年には自身が挑戦者となり、3年連続で趙と棋聖戦で挑戦手合を争った。最近再び調子を上げ、平成17年には張栩名人に挑戦、3勝4敗でタイトル奪取はならなかったが、3連敗後に3連勝を返してシリーズを盛り上げた。現在も3大棋戦全てのリーグに所属している。国際棋戦でも実績があり、平成9年の三星火災杯では決勝に進出した。
昭和51年第10回棋道賞「新人賞」、以降「勝率第一位賞」通算4回、58年第17回、平成2年第24回「敢闘賞」、7年「連勝賞」受賞。同年第13回テレビ囲碁番組制作者会賞受賞。8年(95年度第29回棋道賞)「最優秀棋士賞」「最多勝利賞」受賞。同年第33回秀哉賞受賞。平成14年「連勝賞」、平成17年「最多勝利賞」、ジャーナリストクラブ賞受賞女流棋士小林千寿五段、プロ棋士小林健二七段、準棋士小林孝之二段四姉弟の末弟。 |
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日時 |
棋戦 |
勝者 |
結果 |
敗者 |
1999年6月19日
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第19期NEC1回戦
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山下敬吾 NEC俊英
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黒6目半
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小林 覚 九段
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2002年6月13日
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第27期棋聖リーグ
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山下敬吾 七段
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黒中押
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小林 覚 九段
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2004年4月29日
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第30期天元本戦1
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山下敬吾 九段
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黒中押
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小林 覚 九段
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2004年5月27日
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第29期名人リーグ
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小林 覚 九段
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白4目半
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山下敬吾 九段
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2005年2月3日
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第30期名人リーグ
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小林 覚 九段
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白中押
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山下敬吾 天元
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2005年8月8日
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第30期名人挑戦決
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小林 覚 九段
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白1目半
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山下敬吾 天元
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2005年9月1日
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第30期棋聖リーグ
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山下敬吾 天元
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黒中押
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小林 覚 九段
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2005年12月23日
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第44期十段戦復活戦
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山下敬吾 九段
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白中押
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小林 覚 九段
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2006年4月20日
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第31期名人リーグ
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小林 覚 九段
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黒半目
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山下敬吾 棋聖
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2006年8月31日
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第54期王座挑戦決
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山下敬吾 棋聖
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黒中押
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小林 覚 九段
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2006年9月21日
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第45期十段本戦3
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山下敬吾 棋聖
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白半目
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小林 覚 九段
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通算成績 山下敬吾棋聖 7勝 小林 覚挑戦者 4勝 |
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